プラスチックスマイル

壱郎の大冒険(後)




理科室で少し休憩した後、壱郎達は美術室へ向かった。現在の
時刻はAM12:21。懐中電灯で先を照らしながら、美術室へと向かう。
「次は血のついた机かぁ。」
「うわぁ、あんたが言うと相当グロイね。」
智鶴は美紅に言葉を返す。実際、これが1番ダークだったりするのだ。他は
ガラスが割れるや、避難訓練用のベルが鳴ったりとするのだが。
「誰か、吐きそうだよね。」
「縁起でもない事あっさりいうなよ。」
葉月は何時もより強めの声で、隣にいる智鶴にいう。
「でも、万が一のためにナイフとか持ってきてるから。大丈夫でしょ。」
その場を和ませるかのように葉月はあえて軽い言葉を放つ。
「あ・・・あれ、美術室じゃん。」
翼の持っている懐中電灯は、美術室と書かれた所を指し示していた。
「・・・・お、俺外で待機するわ。」
「駄目。行くの。」

情けない少年は度胸ある自分の恋人に手を引っ張られ、美術室へ入っていった。

4つの電気スイッチを入れる。ポチ、ポチ、ポチ、ポチ――全員が、絶句した。
「い・・・いやぁぁぁぁぁ!!」
数秒後、智鶴はその光景を見るやいなや、ほぼ半泣きの状態で葉月に抱きついてた。
その体はとても震えていて、いつもの強きな智鶴の面影はない。
「うっ・・・・だ、大丈夫!?智鶴・・・。」
今にもその場にへたり込んでしまいそうな智鶴をぎゅっと強く抱きしめている葉月。彼女は
口元を押さえ、口元を手で覆った。目は何時もよりもずっと大きく見開いている。
机一面、鮮血で染められ、俺達を恐怖のどん底まで叩き落した。
「ううっ・・・ねぇ・・・やっぱり、七不思議は本当だったのよ!」
泣きじゃくった声をあげて叫ぶ智鶴。壱郎は歯がゆい思いで一杯だった。この学校の階段は、
あまりにふざけすぎていて、それでも葉月もそろそろダウンだろう。絶望色しかない――誰もが
救いようのない光景だと思っていた。
「ちょっと様子、見てくる。」
壱郎の隣にいた翼は前へ出て、1番真ん前にある机に近寄った。
「おい、付くぞ!」
「・・・・・この甘酸っぱい匂い・・・。」
人差し指でそれを救うと、翼は自分の口へとゆっくり運んだ。
「つ、翼お前!」
あまりの信じられない行為に、壱郎は翼の元へ駆け寄り胸倉を掴んだ。
「・・・・あっ、これとってもオイシー♪」
「な・・・・そ、それどう言う事だ!?」
「いや、微かに甘酸っぱい匂いが鼻にきたんだ。まさかと思って食べてみたら・・・・・?」
「・・・・・食べたら?」

「ケチャップだったわけ――さ。しかも完熟のツブツブのヤツ。美味しいよ。」


あの後、全員が何とか立ち直った。
「ホント、呆れた。まさかケチャップだったなんて・・・・。」
智鶴の顔は不機嫌そのもの。少しでもからかうと瞬時に殺されそうだ。彼女の涙も止まり、いつもの
姿へと段々戻りつつある。
「次の七不思議は――」
ジリリリリリリリリリリーーーーー!!
「ベ、ベル!?」
葉月の困惑した声が聞こえた。
「でもこれって・・・条件が揃わないと鳴らないんじゃ・・・!?」
美紅は信じられない顔を浮かべている。危険を知らせる警告音は、壱郎達の耳の鼓膜が破れそうな
程に響き渡った。
「・・・・・と・・・止まった・・・?(壱郎)」
「・・そう見たい。(葉月)」
一同が驚きの多い少ないはあるにしろほっと一息つく。すると、何かノイズが聞こえる。
「な・・・なんだ?」
『あーマイクのテスト中、いぶきだけど。取り合えず頑張れ。』
壱郎達を励ますような放送はすぐに切れた。また辺りが静寂に包まれる。

「音楽室・・・・・ね。」
「ここって完全防音なんだよな。」
唾をぐっと飲む壱郎。
「行くぞ・・・。」
全員が頷くのを確認すると、壱郎はドアに手をかけ思いっきり開いた。
「・・・・・助けて・・助けてくれーーー!!」
暗闇の中から悲鳴が聞こえる。電気スイッチの近くにいた美紅はすぐさま電気をつけた。
「・・・ヘルプミー!!」
「って・・・り、理事長!?(全員)」

何故か音楽室に、白い着物を着た理事長の前には小刀。後ろの黒人でサングラスをかけた
巨漢2人に囲まれて、苦しそうな顔をしていた。しかもご丁寧に桜吹雪の演出まで。バックの
BGMは大河ドラマ新●組!の主題歌。
「聞いてくれ!
娘(扇菜)の私生活を知りたくて今日の昼、娘の自室に入ってベットにダイビングして
ゴロゴロしていたんだ。そうしたら何故かそれを察したのかいきなり娘が現れて、その場で無言で
即殺スタンガンによって気絶させられ、起きてみたらコイツらに囲まれて今に至るんだ!

無実の私にこんな仕打ちなんてあんまりじゃないか!そう思わないかい、南壱郎くん。」
「アイツも悪いけど、理事長も相当悪いよ。
思春期の女の部屋に親が入るなんて最低その物です!
壱郎の主張の後ろでさも当然のように頷く残りのメンツ。その言葉を聞き、がく然としてしまう
理事長。
「あ・・・ちょっと言いすぎました。それより、音楽室から自殺した男の断末魔が聞こえるという
七不思議の1つなんですけど・・・。」
「それよりって・・・・・まぁ良い、これは私の声だ。」
「は?」
「え?」
「何!?」
「完全防音の導入は約3年前でね。それ以前は音が漏れていたんだ。あの子は相当意地っ張りだから
私を心配するのも叱る事しかできなかっただろう。何故ココなのかは私も知らないが・・・。
まっ、
私としては大好きな我が子に罵倒されてもそれは愛情だと思って日々笑顔で受け取っているよ!
その場にいた全員が思わず、痛い発言ですそれ、と言うとまた理事長はショックを受けて頭を俯け
ブツブツと小声で呟き始めた。

その後、壱郎達は3階の女子トイレへ翼と女性陣が見に行くとガラスが次々に割れていったが、実は
そのガラス1つ1つに僅かな音でも割れるようにと仕込んであった。
そして、最後の1つ。屋上へと向かった壱郎達。屋上は無用心な事に鍵の閉め忘れ。
「・・・・・・・ねぇ、この展開だったと絶対何かありそうな気がする・・・。」
夜は4月の割りに冷え込んでいる。
「・・・・まさかあんたの
永遠のライバルとか?
「んなぁ、美紅!あんた何言ってるの!?」
いきなり智鶴は血相を変えて美紅に詰め寄る。永遠のライバル――錦織二十一(はたかず)の姿が
頭に浮かんだ。顔と頭は良いほうなのに、性格が異常なまでに捻くれていて鬼畜という称号を
手にしている悪魔のような存在。いや、悪魔。
「大体アイツがココにいるわけない!てゆーか既にいたらあたしを地獄へ突き落としている!」
「あれ?
あんたもうプライドがボロボロになったんじゃ・・・。」
葉月の言葉も虚しく
「まだボロボロじゃない!大丈夫よ・・・大丈夫よファイトだちづ――」
言葉の途中で、宙に浮いた感じがした。トンと背中を強く押され――前には障害がなにもなかった。
そう、今彼女は浮いている。何かと思って智鶴のほうを向くと彼女はいない。聞こえるのは叫び声のみ。
「な・・・!!なぁぁぁぁーー!!?」
奇声を発し、どんどん下へと急降下。
髪が揺れているどころじゃない。ドンドン景色が目まぐるしいほど
変わってゆく。下は――コンクリートではなく柔らかいマットが引いてあり、そこにはまだ特殊メイクを
落としていない綾音と呆然としているいぶきの姿があった。2人は手を振って、智鶴を上から見上げている。
智鶴は覚悟を決め、下へと落ちていった。
ボスッとマットの軽い音が聞こえる。
「よぉ、新しいクラスはどうだ?八波。」
上から、自分を馬鹿にする声。やけに甲高い声はすぐに智鶴の耳に届いた。
「は・・・二十一・・・この最低鬼畜男ぉ!」
マットから立ち上がると、屋上のほうを見上げた。眉はつりあがり、米神には怒りのマークが。上では
笑いを抑えている彼の姿が、声から分かった。
「もしも下にマットを引いてなかったらオノレはどーするつもりだった?!」
「そりゃ当然・・・
コンクリートには血がべっとり。でも俺は殺人鬼になるつもりはないからちゃんとマットは
奈良崎サンと近藤サンに用意してもらったんだ。

「面白そうに言うなそこ!」
びしっと二十一を指し、怒りを露にする智鶴。息はフウフウ言っている。
「・・・・・絶対楽しんでるでしょ?」
「まさか。」
「嘘付くな!」

「ほら、新しいクラス。
苛める相手がいなくてさぁ。あえて言うのなら奈良崎サンしかいねーんだぜ?
智鶴はいぶきのほうを鬼さえも震え上がらせる形相で見つめる。
「わ・・・私?」
「でもさぁ、奈良崎サン苛めるといつも
桜が俺の椅子にガムや接着剤貼ったり、俺の部屋に爆弾
仕掛けたりするわけよ
。ならばと思って桜辺りを苛めてもいいけど、アイツ理事長の娘だし。バックの
ボディーガードにたこ殴りにされそうで無理。
八波、その点お前は庶民の中の庶民だから苛めるには
最適なわけ。

あははと軽く彼は笑う。
「・・・・・・・言われっぱなしだけど、どーすんの?」
「フフッ、馬鹿ねぇ。あたしだって考え位はあるわよ・・・。」
すぅっと大量の空気を吸うと
「あーーー!こんな所にいたいけな女の子が!しかもスモッグ(園児服)着てるわぁ!」
10秒も経たないうちに、何処かともなく幼女好きな知り合いが地下から飛びあった。
「何処ぉー!?いたいけな幼女は!?私を呼ぶ可愛らしいロリっこは!?」
(((出てきちゃったよこの人ーー!!?)))

智鶴、翼、綾音、二十一、扇菜以外の全員が心の中で突っ込んでしまう。
「てゆーかさぁ、あんた達なんでいるの?」
「昼休みにも言ったじゃない。公立桜ノ宮学館の七不思議の調査よ。
てゆーかあんたがいぶちゃん
綾ちゃん。鬼畜を雇ったわけぇ?だったら一発殴らせてもらう。てゆーかそれ以前に早く鬼畜を倒して。

最早二十一のは名前では呼ばれない。扇菜は暫く黙ると、分からないのか首をかしげた。
「・・・・
はぁ?アンタ何馬鹿なこと言ってるの。私はその3人は雇ってないわ。それに、この際はっきり
言わせてもらう。
その七不思議。信じる人は多いし、体感しようとする人は多いわ。でもね、それは嘘よ。
「・・・・・はぁぁぁぁ?(全員)」
全員が随分とマヌケな声を出していう。すると昔話を語るように扇菜は語り始めた。
「今から6,7年前辺りに幼い頃の私が冗談ぶって親父に七不思議でも作ったらどうか、
って言ったの。そうしたら数週間後、本当に親父が作って密かに噂を流したわけ。そりゃたまに
そのような出来事を起こしてね。」
「・・・・・止めようとはしなったの?」
美紅が怪訝そうな顔で質問する。
「実際私が気付くの、約5年前だったし。
何よりこの時期に実態を調べる人が急増したのよ。
多分他校の生徒やオカルト研究部、ミステリー研究部とかその手のサークルにね。

しかも
いまだに誰も全部を見たわけではない。ま、当然好奇心が疼くに決まってるじゃない。
もう遅かったのよ。中にはそれと称して
勝手に学園の物を盗んだり、何処かの私立中学辺りの
お偉いさんが密かにココの実態を調査したり。それが急増した半年後に発覚したの。

・・・そして、本当はこの事件を気に
七不思議の真実を理事長から言ってもらう筈・・だったんだけどねぇ。
はぁ、と1つ溜息。
「そしたら何て言ったと思う?
親父ってば真実を言うドコロか、前持って理事長に参加
表明の紙を書いてから体感するって言ったのよ。その代わり、密かに監視カメラが
用意されていて、第3監視ルームで数名ほど怪しい行動をしてないか様子を見るように
命じたの。

「でもあたしたち、参加表明なんて書いてないよ。」
葉月が扇菜に聞く。また、1つ溜息。腕を組んだままの態度は変えずに。
「昔は親父の管轄だったわ。でも今は違う
。半年前に、私の管轄に変わったのよ。
「あ・・・だから。」
「そ、
智鶴ちゃんが昼休み言ってたでしょ?だから、参加表明なんて書かせる必要がなかったの。
最も・・・なんで残り3人がいるかは私も分からないけど。

ギロリ、といぶきと綾音、二十一のほうに視線だけを向ける。
「ま、それを知った
親父が後で望みの物をやるからって3人に特殊メイクを施したりしたんでしょうね。
「でもあんた、そんな事絶対やるワケないじゃん。」
「ええ、当然じゃない。でもね・・・・
今から半年前、知り合いの園児にそのことを伝えたらもう興味津々でね。
しかも太陽にも負けない笑顔で、私も見たいなぁ〜、って言ったの。だから私はこうして頑張れるわけよ!

「・・・・しょーもねぇ理由。」
ボそりと壱郎は口から漏らす。
「でも、真理まで辿り着いたのはあんた達が初めて。中々やるもんだわ。」
「ねぇー。特殊メイク早く落としてぇー。」
「ええ、親父もアレだし。コッチに呼んでおくわね。」
ポケットの中にある携帯を取り出し、慣れた手つきでボタンを押す。
「残りのメンツはどーすんの?良かったら送っても良いけど。」
「このブルジョワめ。」
「グチグチいうならあんたらが金でも稼ぎなさい。」
ブルブル・・・車の音がする。
「じゃぁ行きましょうか。」
「てゆーか毎回良いところばっかり取りやがって(壱郎)」
夜はまだまだ終わりそうもない――そして

「え!?
マジで切腹するの?
「YES。」
「てゆーか音楽室で腹きりなんて前代未聞ではないか。」
「黙りなさい。」
「だ・・・黙りなさいだなんて貴様ら、私は雇い主だぞ!?」
「雇い主はお前。ご主人様はお前の娘さん。さぁ、
折角演出まで施したんだ。
腹きり腹きり。

「てゆーか今時腹きりなんて武士じゃないんだから・・・・貴様ら、いい加減にしろー!
って嘘です!発砲しないで!お願い!私、マジで死んじゃうから!」
――こちらのよるも、まだまだ終わりそうもない。

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