プラスチックスマイル
計画会
5月の中旬にさしかかる頃。最初の大きな行事・・・それは日帰り研修
「はい。ではクラスの中で5名1組のグループを作って下さい。」
近くの小京都へ行くことになった俺達。本当は加工食品会社の見学だったが、急に
小京都の実態を調査する事になった。最も、俺としてはそっちのほうが大賛成だ。
いかにも遊んでらっしゃいと言ってるのも同然。
「5限目が終わるまでには決めて下さいね〜。」
先生が資料を取りに行くため、教室を出て行った。教室内はガヤガヤと騒ぎ声や
音が聞こえる。俺はいつものメンツと行くつもりだ。
「でもさぁ〜。ホントにうれしーよねぇ。」
後ろの机を合わせて、メモとしおりを取り出す。
「予定がいきなり変わるなんて・・・・もうサイッコー!!」
恩田がうーんと背伸びをして生き生きとした笑みを浮かべる。
「加工食品工場なんてやってらんないよ。(翼)」
「うんうん、そーだよねぇ。まぁレジャー施設じゃないけど許せるし(智鶴)」
「んでー食べ歩きして、色々見てきて、写真取って、お土産買って、それなりに
調査結果を書けばいいし。文句なし。(葉月)」
皆が生き生きした顔をしている。多分小京都になったのは桜さんのおかげだと俺は思う。
最も、あのロリコン女の場合、俺達のために変えてくれたわけでもなく奈良崎さんや近藤さんの
発言によって変えたのだろう。てゆーかそれ以外予想が浮かばない。
「んじゃー今ある資料だけで計画立てよ〜。」
葉月がシャープペンシル、メモ、資料を見せると早速俺達は調べ始めた。
同じくB組では、いぶきと綾音とその他女子3人が机を合わせてあれこれ言っていた。
「はぁ・・・やっぱり私が余計な事言ったのが原因なのかな・・?」
1日に最低3回はする溜息の、2回目の溜息を彼女は漏らした。
「ん?どーして。」
「いやぁ・・・ほら、加工食品の研修がいきなり変更されたでしょ?」
「うん。」
女の子Aが頷く。
「んでさぁ・・私、ちょっと嫌かもって扇菜ちゃんの前で言った訳。そうしたら翌日に加古食品への
研修が何故か変更されたわけね。」
「あ・・・・。」
「・・・・んで小京都に変更になった・・・・。」
「嬉しくはないの?」
女の子Bが資料を揃えながら言う。
「嬉しいけどさぁ・・・なんつうか複雑。」
「でも彼女なりの優しさだよ。それ。」
「綾ちゃん・・・まぁそう受け取りたいけどね・・・・。」
遠く、何処かあさっての方向に顔を向けながら、乾いた笑い声をいぶきは出した。
「ロイヤルストレートフラッシュ。残念ね。」
勝ち誇った笑みを浮かべて、扇菜はトランプを弄んでいる。
「・・・・また私の負けか。」
「ええ、そうよ。ポーカーでね。」
机の上には全種類のポッキーがダンボールに詰めてある。
「3勝0敗。私の圧勝により、ダンボールの中のポッキーは全て私がもらいます。」
「ちょ・・ちょっと待て!そうしたら君が太るぞ!」
「なっ・・・何言うのよこのスットコドッコイ!」
どう足掻いても負けるのは分かっているのに、と扇菜は一言。
「せめて私にも。ギブミープリーズ!」
「はいはい。親父は板チョコでも口に頬張ってなさい。」
「ひ、酷い!」
子供のようにその場で駄々を捏ねる53歳。
「・・・分かったわよ。少し位分けてあげるわ。まぁ研修先を変更してくれたおかげよ。」
ぶっきら棒に扇菜は言うと、ソファに深く座り込んだ。
「でも、このポッキー。一体誰が送ってきたの?」
「私の知り合いさ。」
「・・・・まぁいいんだけどね。ポッキーにしろ、チョコにしろ大好きだし。」
「そのうち太るよ。」
ポツリ呟いたつもりが、扇菜の手中にあったトランプを彼女が理事長の頭に強く当てた。
「痛いよ!」
「こんな目に会いたくなかったら、もっとしっかりしなさいよ!このバーコード。」