プラスチックスマイル
鬼畜なアイツはフリルエプロン
「ココからは各自行動です。午後の2時半までにはココに集合して下さい。」
学園から高速道路を通って1時間半。やってきました某所にある小京都。壱郎達は勿論
この日を待っていた。
「でも観光客。多すぎじゃね?」
美紅の言葉通り、辺りには人人人、人の山。ココまで混んでいるとは思ってもいなかった。
その中に大人数の生徒もプラスされるものだから人の臭いがプンプンするのだろう。
「・・・・ねぇ智鶴ココの中を歩いてゆくんだよね?」
「うん、そうだよ。ココはメインストリートだからねぇ・・・。」
全員の気持ちは、一気に萎えてしまう。が、こんな所で挫けてはいけないと思い人込みの
中5人は入っていった。
後ろのほうから叫び声が聞こえる。
「や、やめろ!お・・・押すな!うはぁぁぁ!」
「・・・・四ノ原・・・の声ね。」
別のグループにいる四ノ原空也の声が聞こえた。ギュウギュウ詰めのこの
状態であられもない声を出している彼。この少年の性質を知らない観光客は
彼を奇怪の目で見つめていた。
「あ・・・あ・・!八波ぃ!助けてくれぇ!助けて・・ぃやーー!!もう僕おかしくなっちゃうぅ!!」
彼はとうとう絶頂へと登りつめるとその場から消えてしまった――いや、あまりの気持ちよさに下へ
崩れてしまった感じだろうか。
「おい!大丈夫かよ!?」
彼と同じグループの男子が彼に声をかけるが、意識が戻るのはもう少し後になりそうだ。敏感少年も
この性質なのか毎日が大変であろう。
「・・・・・八波、お前呼ばれてるぜ。」
「気のせいだよ。このヘタレ。」
冷や汗を彼女は流すと、先ほどよりも歩くペースを速めた。
「あ、あんな所にコロッケ屋が。」
「牛肉の名産地だからね。」
「じゃぁ早速・・・・食べるとしますか。」
女3人衆がガヤガヤと騒ぎだし、50メートル先にあるコロッケ屋へ向かう。
「すみませーん。コロッケ5つくださ・・・・って鬼畜!?」
「よぉ、相変わらずキャンキャンるっせーな。」
鬼畜という代名詞の二十一はエプロン姿でコロッケを5つ渡す。
「お前1人でそんなに喰うのかよ?」
「んなわけない。それよりどーしてフリルエプロン姿・・・ぷぷぷっ?」
「笑うんじゃねぇ。俺達のグループ、コロッケ屋の手伝いなんだよ。まぁ・・・昼飯が美味しいとの
評判らしいな。しかもココで手伝っている俺らの班はお前らとは違ってタダで喰えるし。」
「その言い方とっても気に食わない。」
「まっ、所詮プライドボロボロな八波さんとは違うんだよ。さ、それよりコロッケ冷めるぞ。」
「分かってる。じゃあね、この悪魔。」
(って鬼畜に悪魔・・・・まぁいいや。俺に口で勝てるヤツなんてそうそういないし。
しかもコロッケがな・・・まっ、楽しみにしてろよ。)
クククっと怪しい笑みを浮かべると、次の客へまたコロッケを渡した。
「――かっ、かりゃい!き、キムチがにゃかに!(智鶴)」
「あー!私のには納豆が・・・。(葉月)」
さすが、悪戯には一切の抜かりなしの錦織二十一。彼はコロッケに様々な物を入れていたのだ。
「私はコロッケの中にコロッケがあった。(美紅)」
「おっ、当たりって書いてある木の棒が。よし、この場合アイスでいう当たりが出ればもう1本という
先人の教えに遵ってもう1つもらっていこう!(翼)」
「って俺のは中が空洞じゃねーかよ!二十一のバカヤロウ!(壱郎)」
しかし、こんな忙しい中一々、しかも中身を全部変えてコロッケの中身を仕込むとは中々
やるもんだと全員が感心した。だが、いくらなんでもコレはないだろう。